移動式クレーン市場規模、シェア及び業界分析、タイプ別(トラッククレーン、全地形対応クレーン、ラフテレーンクレーン、クローラークレーン、その他)、用途別(建設、石油・ガス、造船、電力・公益事業、その他)及び地域別予測、2019-2032年

はじめに:成長を続ける移動式クレーン市場の概要

グローバルなインフラ建設プロジェクトの活発化や物流ネットワークの拡充を背景に、移動式クレーン市場は着実な成長軌道を歩んでいます。Fortune Business Insightsの調査レポート「移動式クレーン市場」によると、世界の移動式クレーン市場規模は2018年に143億5000万米ドルと評価されました。そして、2024年から2032年にかけての予測期間中に**年平均成長率(CAGR)5.8%**で拡大を続け、2032年には332億6000万米ドルに達すると見込まれています。この成長を牽引する主な要因は、新興国を中心とした急激な都市化、それに伴う商業・住宅建設の需要増、そしてエネルギー分野や港湾・空港施設などの大型インフラ投資の活性化です。特に、従来の固定式クレーンに比べて移動性・柔軟性に優れ、多様な現場環境に対応できる移動式クレーンの利便性が、現代のプロジェクトニーズに合致し、需要を押し上げています。

市場を構成する主要タイプとその特徴

移動式クレーン市場は、その機動性、地形適応能力、起重能力によって細分化され、各タイプが異なる用途分野で強みを発揮しています。

  1. トラッククレーン:トラックのシャシーにクレーン装置を搭載した最も一般的なタイプです。公共道路を自走できるため、現場間の移動が容易で、都市部の建設現場から災害復旧作業まで幅広く活用されています。機動性の高さが最大の利点です。
  2. 全地形対応クレーン(オールテレーンクレーン):不整地やオフロードでの走行性能と、舗装路での高速移動能力を両立した高性能機です。大型タイヤと複数車軸による優れた安定性と高出力を特徴とし、大規模プラント建設や風力発電タービンの設置など、重く大型の資材を扱う過酷な現場で不可欠な存在です。
  3. ラフテレーンクレーン:建設現場や未舗装路などの悪路走行に特化したクレーンです。小型で旋回半径が小さく、狭隘な現場でも機動性を発揮します。主に中小規模の建築現場や土木工事で利用されています。
  4. クローラークレーン:無限軌道(クローラー)を装備し、極めて不安定な地盤や軟弱地でも優れた安定性と接地圧を実現します。非常に重い荷物の吊り上げ・移動が必要な大型プラント建設、橋梁架設、重機の設置作業などで用いられます。ただし、自走速度が遅く、現場間の移動にはトレーラー輸送が必要となる場合が多いです。
  5. その他:このカテゴリーには、特殊な目的に開発されたコンパクトクレーンや、ピックアップトラックに搭載する小型クレーン、あるいは近年注目を集める電動式や水素燃料電池式などの新興技術を採用したクレーンが含まれます。環境規制の強化に伴い、この分野の技術革新が市場に新たな風を吹き込んでいます。

用途別に見る多岐にわたる需要先

移動式クレーンの需要は、経済活動の根幹をなす複数の産業から生まれており、その汎用性の高さが市場の強固な基盤となっています。

地域別分析:アジア太平洋が市場をリード

地域別では、アジア太平洋地域が2018年時点で**43.69%**という圧倒的な市場シェアを握り、グローバル市場を支配しています。この地域の成長エンジンは、中国、インド、東南アジア諸国です。政府主導による大規模なインフラ投資計画(例:中国の「一帯一路」構想、インドの「スマートシティー Mission」)、急激な都市人口の増加、および製造業・物流拠点としての重要性の高まりが、建設活動を活発化させ、移動式クレーン需要を直接的に刺激しています。

北米市場は、老朽化したインフラの更新需要やシェールガス・石油関連プロジェクトが安定した需要を生み出しています。欧州は厳格な環境規制が市場に影響を与える一方で、再生可能エネルギー分野への移行に伴う風力発電施設の建設が市場の重要な支えとなっています。中東・アフリカ地域では、都市開発プロジェクトやエネルギー関連インフラ建設が市場の成長を促すと予想されます。